今回は「マルチタイムフレーム分析(MTF分析)」について解説します。
MTF分析については、今では「常識」レベルになってはいますが、それでも正しくMTF分析をしてトレードが出来ている人は決して多くは無いのが現状です。
その原因は複雑さと解釈の幅にあると思います。
同じ価格推移を示したとはいえ、時間軸によってチャートの値動きは全く違ってきます。
それが解釈を難しくして、必要以上に複雑にチャートを考えてしまうことに繋がってしまうのです。
「マルチタイムフレームでチャートを見てるんだけど、全然勝てない!」
と思っている人は、ぜひこの記事を最後までご覧ください。
マルチタイムフレーム分析とは?
マルチタイムフレーム分析とは、同じ銘柄について複数の時間足チャートで分析して、相場環境やトレンド・波を把握し、限りなく優位性の高いエントリーポイントを見つける手段です。
デイトレやスキャルだけでなく、スイングトレードなど、どんなトレードスタイルであっても利用されることが多いです。
一般的なMTF分析では、上位足⇒下位足と徐々に時間足を落としてチャート分析していきます。
大きな流れを見て、その中を細かく虫眼鏡を使ってみていくイメージです。
下のチャートは左から15分足、1時間足、4時間足チャートです。
一番右の4時間足チャートの一部の中に1時間足チャートがあって、その1時間足チャートの一部に15分足チャートがある・・・。まぁ当然と言えば当然ですね。
MTF分析については、どの時間足を組み合わせないといけない!というルールはありません。
上位足と執行時間足の2つでも良いですし、上位足、中位足、執行時間足、下位足と4つにしても良いです。手法に合わせて決める必要が出てきます。
ただ、分析する時間足が多くなればなるほど、チャートの情報量が多くなるわけですから、その分だけ判断材料が多くなり、迷いも生じやすくなります。
トレードでは不要な情報はシャットアウトすべきなので、必要な時間足だけを使うべきです。
マルチタイムフレーム分析は何の為には行う??
マルチタイムフレーム分析は、「情報量が多くなって迷いが生じやすくなる」と書きましたが、ではマルチタイムフレーム分析は何の為にやるんでしょうか?
デメリット以上のメリットがあるからこそ、MTF分析はこれだけ広く普及しているはずです。
その理由として一般的によく言われているのは、「相場をより広い視野で見て、その流れに従って取引くしていく」というもの。
ある程度大きな視点でポイントを絞って、それを徐々に細かく分析していくイメージです。そうすることで、エントリーポイントをピンポイントに絞ってトレードを行うことができます。
他にも以下のような理由があります。
- 1つの時間足だけでは足りない情報を他の時間足で補う
- 複数の時間足でチャートポイントを見極める
- トレンドの勢いに乗る
- トレンドフォローの精度を上げて、リスクを減らせる
いずれにしても、「トレードの優位性を高めるために行う」という認識は持っておいてください。
何でわざわざ複雑で面倒で分かりにくい分析をやるのかと言えば、「優位性を高めるため」です。逆に言えば、優勢につながらなければ、こんなことやる必要はありません。
マルチタイムフレーム分析の弱点について
「上位足のトレンドには逆らわないことが重要!!」
MTF分析ではこのような説明が多いと思います。
これは確かに間違ってはいませんし、大きな流れに乗った方が勝ちやすいことが多いのは言うまでもありません。
ただ、理論的に正しかったとしても、それがデメリットになることがあります。
具体的に言うと、以下の2点です。
- 上位足と下位足の方向が揃うまで待たないといけない
- 機会損失になりやすい
上位足と下位足の方向が揃うまで待たないといけない
マルチタイムフレーム分析では、執行時間足よりも大きな時間足を上位足に設定します。
例えば、デイトレで15分足を使うなら、上位足は1時間足や4時間足になります。
人によってはさらにその上の日足を使うこともあるでしょう。
スイングであれば、週足や月足も上位足になります。
ここで問題が出てきます。
上位足の動きはゆっくりなのです。足が確定するまでに時間がかかります。
つまり、上位足のトレンド方向に従ってエントリーする場合、上位足のトレンドが出て、更に執行時間足でも同じ方向のトレンドが出るまで待つ必要があります。
上位足が2つ以上あったら、もっと待つ必要があります。
例えば、上位足が上昇トレンド中で執行時間足が下降トレンド中なら、上位足のトレンドが下に切り替わるか、執行時間足のトレンドが上に切り替わるかまで待たないといけません。
トレンドの判定方法にもよりますが、執行時間足が15分足であれば、トレンド転換を待つだけでその日のトレードは終了します。
機会損失になりやすい!!
上位足と執行時間足の方向が揃うまで待つことは、トレンドフォローとしては正しい姿です。
しかし、しっかりと条件が揃うまで待っていたら、その間に大きな動きが生じた時にエントリー出来ないことになります。コレが機会損失です。
例えば、上位足が上昇トレンド中で、下位足が下降トレンドだったとします。
下位足の下降トレンドの勢いが非常に強くて一気に下げて、上位足の上昇トレンドが転換スレスレまで進んだとします。
この場合であっても、ショートはできません。
なぜなら、上位足が揃っていないから。
つまり、執行時間足でショートしたい局面であっても、上位足の制限のおかげでショートできないわけです。
もちろんこれはルールに従った結果ですから、仕方がありません。
また、このルールのおかげで不要なトレードを減らし、ダマシを避けられることもあるでしょう。
しかし、場合によっては大きな値動きを見逃すことになりますので、機会損失になります。
トレンドは必ずしも大きな波の値動きから始まるのではなく、小さな波の値動きから始まるのです。
マルチタイムフレーム分析に張り巡らされた罠!
前述の通り、トレンドは小さな時間足の波から始まり、それが大きな時間足に波及していきます。
相場は大きな流れに従って動きますが、小さな流れが大きな流れを作ることも事実です。矛盾しているようですが、コレが相場の真理であり、現実です。
ですので、このようなトレードをしたことはないでしょうか?
日足では下降トレンドで4時間足も下降トレンドです。
この二つの時間足が下降トレンドの場合、1時間足はどうなっているでしょうか?
必ずしも1時間足も下降トレンドになっているわけではありません。
場合によっては上昇トレンドに切り替わっていることもあります。
もし、日足と4時間足が下降トレンドで1時間足が上昇トレンドだった場合、どんなトレードをしますか?
候補は以下の4つです。
- トレンドに従うのであれば、1時間足が下降トレンドに入ってショートする
- 上位足の流れが明らかに下と判断して、1時間足が上昇トレンド中であってもショートする
- 1時間足の上昇トレンドが勢いて、日足や4時間足に波及した後にロングする
- このまま上げると判断して、日足と4時間足の流れに従ってロングする
正解はどれだと思いますか?
MTF分析の基本で言えば、①でしょう。
しかし、②~④の全て間違いとは言えません。なぜなら、その時の相場によって結果は違うからです。
相場には絶対はないのですから、どれもある意味「正しい」のです。
これがマルチタイムフレーム分析を混乱させる要因の一つです。
「全部の時間足でトレンドが揃ったからエントリーしたけど、そこがトレンドの終点だった」なんて経験ありませんか?
MTF分析的に完璧なところで入れたとしても、負ける時は負けるんです。
ですが、自分が狙うところは、相場の大きな枠組みの中のどんな所なのかはしっかりとしておいた方が良いのは言うまでもありません。そのためにMTF分析をやるのです。
コレが分かってくるようになると、より相場に対する理解が深まります。もちろん勝率も上がってきますので、腐らずにMTF分析を継続していきましょう。