本書では、最も効率的な運用は「山越えを待って売り、谷越えを待って買う」ことに尽きると言っています。これは、言い換えれば、売り買いの「転換点」を見極めることでもあります。
ここで問題なのが、転換点を“どうやって見極めるか”です。その方法として、まず代表的なテクニカル指標を学んでいただき、そのあとで、転換点の見極めに役立つ6つの方法を紹介します。
そして、最終的には、テクニカル指標を排除した「素のチャート」にて、4つの値動き(高値&安値切り上げ、高値&安値切り下げ、抱き線、はらみ線)で、目の前の動きに対処していく(=建玉操作していく)方法を学びます。
本書で知ったことを、「学んだ」だけで終わりにしないでください。実践してみてください。何度も何度も、合理的に正しいと思われる練習を繰り返すことでのみ、技術は上達します。
FX業界では有名人の矢口新さんの本です。
矢口さんと言えば、「実践 生き残りのディーリング」で有名ですね。
私もかつてはこの本を読んで何度も勉強しましたし、今でも定期的に読み返しています。
そんな矢口さんの力作が今回ご紹介する「短期トレード教室」。
元ディーラーという視点からトレードで勝つための沢山のテクニックや考え方を提示してくれています。
山越えを待って売り、谷越えを待って買う
本書のコンセプトは「山越えを待って売り、谷越えを待って買う」。
これに尽きます。
具体的にどんなトレードになるかというと、こんな感じ。
上げてから明確に下げてきたところで売る。
このようなトレードが一番の理想ということで、どうやったら実行できるか?について解説しています。
山越え・谷越えを認識するためのテクニック
山越えや谷越えが確実に分かるのであれば、それはもう聖杯です。
もちろんそんなことは誰にも分からないのですが、本書の2章では元ディーラーの目線から、どういった指標を使うと山越えや谷越えが認識しやすくなるか、つまり相場の転換の見極め方について解説してあります。
転換点の見極めについてよく使われる指標として以下の4点が紹介してあります。
- ボリンジャーバンド
- 移動平均線
- オシレーター
- トレンドライン・チャートパターン
これらは確かに機能するものの、過去の価格を利用する指標の特性上、遅れたり複雑だったりと使いづらい点もあります。
インジケーターは主に終値のみを利用して計算されます。
言ってみれば終値だけに重きを置いてチャートを見やすくしてくれるようなものです。
そんなことから、本書内ではインジケーターは自転車の補助輪のようなものと喩えています。
自転車の補助輪は、最初は有用なものの、慣れてくると邪魔な存在になり、かえって危険な存在になる。だから、最終的にはローソク足だけの「素のチャート」を見てトレードすべきだ。
この主張から、素のチャートだけで転換点を探し求める方法がベストである、という結論に至ります。
素のチャートだけで転換点を探す方法
素のチャートだけで転換点を探す方法は超簡単。
- 前の足の高値と安値を切り上げたらロング
- 前の足の高値と安値を切り下げたらショート
これだけです。
「え?これだけで転換が分かる分けないでしょ?」と思うかもしれません。
でもこれが意外にも悪くないのです。
シグナル化したインジケーターがある
実際に前述のルールをシグナル化したブログがあるのでご紹介します。(シグナルも無料でダウンロードできます。
前の足の高値&安値切り上げor高値&安値切り下げでドットが出る「simplest_dot」
ポンドルの日足に表示させてみました。
赤いドットが前の足の高値と安値の切り下げ
となっています。
個人的には移動平均線を使ってトレンド方向を明確にして押し目買いや戻り売りに特化して使うと面白いと感じました。
もちろんこの他にプライスアクションやオシレータ等も組み合わせて確度を上げられそうです。
「前足の安値と高値を切り上げた」という現象について深く考えると、確かにダウ理論に通ずるものがあります。
例えば日足で前足の安値と高値を切り上げている状態は、4時間足や1時間足で見たらダウ理論のトレンドのように綺麗な波を描いていることもあるでしょう。
なので、日足でドットが出ていることを一つの条件にして、1時間足や5分足などでトレンドフォローをしていく・・・。こんなやり方は理にかなっていますよね。
中級者向けの脱インジケーター指南書だ!
矢口新の短期トレード教室はトレード初心者向けと言うよりは、色々なインジケーターを触ってきた中級者に「素のチャート」に帰ることを勧めた本です。
ローソク足のプライスアクションの奥深さ、トレードをシンプルに考える事の重要性。
これらを再確認できる良書だと思います。
翻訳書ではないので価格がリーズナブルなのも高評価の一つです。
アマゾンレビューのレビュー
アマゾンレビューの内容について個人的な見解を書きます。
(アマゾンレビューについては概要をまとめています)
元ディーラー自慢が多くて嫌。
素のチャートを使った新しい観点についての記載は無い。
この本のメリットは、テクニカルトレードにおける考え方と技法を体系的にまとめた点にあるのではないでしょうか。
ただ、本書で書かれていることを実践したが、なかなか難しかった。
それでも練習する価値はある。
トレードは知っていれば勝てるといったものではなく、練習が必要。
それも一つの事実だと思います。
ただ、本書の中でも書かれているように、練習して精度を高めることが重要です。
この本は裁量トレーダー向けなので、システムトレーダーには向かないかも知れないですね。