ボリンジャーバンドは、「知らない人はいないんじゃないか?」と思うくらい有名なテクニカル指標です。
ジョン・ボリンジャー氏によって考案されたボリンジャーバンドは、移動平均線に加えて、その上下に標準偏差を示すバンドを一緒に表示するという画期的なアイディアによって、瞬く間に世界中に広がりました。
その人気は、バンド・チャネル系の代表格であったケルトナーチャネルやドンチャンチャネルを過去のものにするレベル。トレンド方向だけでなく、ボラティリティと価格の変動範囲までが分かるわけですから、無理もないでしょう。
ボリバンは本当に使えるインジケーターの一つであることは間違いありませんが、どうも過信されすぎているようにも思えます。
そこで今回はボリンジャーバンドの欠点を中心に解説しつつ、欠点の解消方法についてもまとめていきます。
ボリンジャーバンドの特徴と利点
- 順張りにも逆張りにも使える
- 相場が停滞するスクイーズや拡大するエクスパンションがある
- ±2σ、±3σなど、相場の反転ポイントが分かる
- バンドウォークなどがあるため、トレンド方向も見えやすい
上記の特徴をまとめたのが下のチャート画像です。
- 値動きが停滞してスクイーズの状態になればバンド幅が狭くなる
- スクイーズが続くとバンドをブレイクしてエクスパンション⇒バンドウォークとなる
- スクイーズやレンジだと±2σで反発する
正に完璧ですよね。
相場がレンジ・スクイーズなら±2σからの反転を狙えばいいし、ブレイクしたらその方向に乗ればOK。レンジでもトレンドでも対応できるのがボリンジャーバンド・・・・と解説してある記事が多いですが、そんなに甘くないのが相場です。
良くも悪くも、ボリンジャーバンドは後付け解説しやすい指標なのです。
ボリンジャーバンドの欠点
綺麗ごとはこれまでにして、ボリンジャーバンドのメッキを剥がすべくボリンジャーバンドの欠点について書いていきます。
- あくまでも遅行指標に過ぎない
- 価格は正規分布ではないので、理論通りに動かない
- スクイーズからエクスパンションで素直に動くわけではない
価格は正規分布ではないので、理論通りに動かない
- ボリンジャーバンドの±1σの範囲内には価格の約68%が収まる
- ボリンジャーバンドの±2σの範囲内には価格の約95%が収まる
- ボリンジャーバンドの±3σの範囲内には価格の約99%が収まる
と言われています。
これは統計学の標準偏差から導かれた数字なのですが、あくまでもこの数字が適用されるのは上の画像のように価格がベルカーブのような分布(正規分布)を取る時のみです。
正規分布を取るのは、例えば人間の身長だったり、特定の生き物の大きさ・・・といった自然に存在するものの分布が多いです。
しかし、分布は正規分布だけに限りません。
例えば収入格差について考えてください。
日本の平均所得は約550万円だそうです。
しかし、その中には所得がゼロの人もいれば、10億円以上の所得がある人もいます。かなり分布がばらついており、裾が広いのです。これをロングテールと呼びます。
超金持ちの年収が一般人の生涯収入を軽く超えるケースだってあるわけです。分布が激しいんですね。
価格の変動もこれと同じで、大きく動く時と小さな動きの時では明らかに違います。3σを超えるレベルの動きも統計上の数字よりも多いのです。
あくまでも遅行指標に過ぎない
ボリバンは移動平均線の上下に統計から導かれた価格の変動領域を示すため、先行指標に見えます。しかし、移動平均線と同じく過去のデータを利用して導かれたものに過ぎませんから、遅行指標です。
つまり、遅れて動くわけです。
例えば下のチャートを見てください。
赤い水平線は現在のバンドの2σの値を示しています。
±2σからの逆張りを狙うのであれば、赤いラインにショートの指値を置きたいですよね?
しかし、一気に上昇するとバンドも一緒に広がります。
上のチャートの青いラインが現在の2σのレートで、赤いラインが当初の2σです。
全然違うレートですよね。
そして更に上昇して確定。
2σのレートも、もっと上昇して確定しました。
このようにボリバンは遅行指標なので、最新の足の動きが大きければバンド自体の値も当然のように変わります。
事前に逆張りの指値を入れていたら、見た目以上に狩られてしまうのです。
スクイーズからエクスパンションで素直に動くわけではない
価格のボラティリティは大⇒小⇒大⇒小と繰り返します。
ボリバンを使えばその流れが凄くよく見えるのは大きなメリットですが、動く方向までは予測できません。
例えば下のチャートのようにダマシのブレイクもあります。
このチャートでは、スクイーズから上にブレイクしようとするもかなわず、再びスクイーズが続いて下にブレイクしています。
確かにボラティリティは拡大と縮小を繰り返すのですが、「いつ、どのタイミングで拡大・縮小をするか、どの方向に拡大するか」については、ボリバンでは分からないのです。
ボリンジャーバンドは使えないわけではない
ここまで、敢えてボリバンの欠点について指摘しました。
しかし、これはボリバンに対して愛があるからこその指摘です。
そもそも完璧な指標なんて存在しません。
むしろ、欠点や弱点を知り、それを補う方法が分かれば、より指標を使いこなすことが出来るのです。
そこで最後に、ボリバンの欠点を解消するテクニックを解説します。
- ボリンジャーバンドの設定期間を大きくする
- 相場の流れを見るために使う
- 移動平均線と組み合わせる
ボリンジャーバンドの設定期間を大きくする
ボリバンのパラメーター設定としては20、もしくは21期間が一番多く採用されます。
確かにこのパラメーターも良いのですが、値をもっと大きくしてやるとダマシが減ります。
以下に20期間と50期間のボリバンを並べますので比べてみてください。
設定パラメーター20のボリンジャーバンド
設定パラメーター50のボリンジャーバンド
明らかに50の方がゆったりとしていて、分かりやすいと思います。
また、期間が大きいほど現在のバンドのレートが直近の値動きに左右されにくいですので、リペイント自体も軽減します。
相場の流れを見るために使う
ボリンジャーバンドは、移動平均線とその上下に確率偏差のバンドを示した指標です。
これの何が画期的なのかというと、移動平均線でトレンド方向が分かり、バンドの広さで現在のボラティリティの拡大・縮小が視覚的に分かるからです。
そもそもボリバンは±2σからの反転を狙うものでは無く、相場の状況や環境を読み取るために使うものなのです。
特にバンド幅の推移を見ることで、相場のボラティリティが手に取るように見えます。
チャート下に示しているオシレーターはボリンジャーバンドのバンド幅を示すものですが、この上下で相場のボラティリティの推移が本当によくわかりますよね。
移動平均線と組み合わせる
という人は、大きな期間の移動平均線を組み合わせることをお勧めします。
このチャートは20期間のボリバンにと100SMA(赤)を表示しています。
どうでしょう?方向が明確になりましたよね。
100SMAよりも上にバンドがある時に、-2σタッチから反発した所でロングすれば、より高い精度でトレードできると思います。
ボリバンの欠点と特徴を知って、上手に使っていこう
本記事ではボリバンの欠点と特徴について解説しました。
ボリバンは完璧な指標ではありませんが、欠点や弱点をカバーできる使い方も沢山あります。
大きな期待をせず、ボリバンの示す挙動が「何を意味しているのか」をしっかりと考えた上で付き合っていきましょう。