FXにはテクニカル分析とファンダメンタルズ分析があります。
ファンダメンタル分析は、範囲も広くて難解なのが大きな特徴で、何をどこまで勉強すればいいのかが難しい分野でもあります。
テクニカル分析とは違って、「ここでエントリー」といった明確な指標となるわけでもないこともあって、ファンダメンタルズをトレードで使用しない人も多いです。
では、ファンダメンタルズ分析は不要なのでしょうか?
そんなことは無いと私は思います。
長期的な相場の値動きは「需給」を始めとしたファンダメンタルズで動いているからです。
価格が動く要因探求するファンダメンタル分析は、程度の差はあれ、テクニカルトレーダーでも知っておいて損はないと思います。
そこで今回は、ファンダメンタル分析の基礎知識と各種経済指標、為替を動かす要因について詳しく解説しています。
これを読めば日々のニュースと為替相場がどう結びついているかを一通り理解していただけるはずです。
ファンダメンタルズ分析とは
外貨の需要と供給のバランスは、為替レートを決める大きな要因になっています。
通貨を発行する国の政治的、経済的な要因が需要と供給のバランスに大きく影響し、価格に大きな影響を及ぼします。
それらの要因の中には、
- 金利
- 株価
- 外交
- 選挙結果
- 原油価格
- テロや紛争
- 地政学
- 疫病
なども含まれ、外国為替の中長期的な変動要因となります。
これらを突き止め、将来どのような需給のバランスになるのかを予測するのがファンダメンタル分析です。
為替相場の中心はドル
為替市場においては、基軸通貨を発行するアメリカドルが一番の影響力を持っています。
そのため、市場参加者は米国の情報に敏感に反応します。
例えば、米国と日本との国内総生産(GDP)の数字が同じくらい良かった場合、ドルのレートに与える影響の方が大きいので、為替レートはドル高円安に振れ、その逆であればドル安円高に振れることが多いのです。
株式市場では、全面高、全面安というように全ての銘柄が同じ方向に動くことがあります。
しかし為替は通貨の相対的な価値ですから、ある通貨が安くなれば必ず高くなる通貨があります。
為替でよく見られるのが、ドルに対して他の通貨が全て上がるか、もしくは下がるという動きです。
これを「ドル全面安」や「ドル全面高」などと言ったりします。
実需の為替と投機の為替
繰り返しますが、為替レートを動かす要因は需給です。
では、何が需給を決めるのかというと、人が為替取引をする「動機」にあります。
この動機」によって、為替取引は実需と投機に分けることができます。
実需の為替
為替取引が特定の目的に付随したものである場合、それを「実需」といいます。
実需で身近な例は、海外への送金や海外旅行です。
自分の子供が留学していて海外へ仕送りする場合や海外旅行する場合は、円売りドル買いをします。
クレジットカードを使って海外の商品を購入する際も実需になりますね。
実需で大きいのが、輸出入です。
日本の輸出業者は、輸出の代金をドルで受け取ってそのドルを売って円に替えます。
そのため、輸出が増えるとドル売り円買いが増え、ドル円レートが下がります。
反対に輸入企業は輸入代金を支払うために円を売ってドルを買います。
これにより、輸入が増えると円売りドル買いが増えて、ドル円レートが上がります。
その他の実需としては、海外企業のM&Aに絡んだ為替取引も実需に分類されます。
例えば、日本企業が海外企業を買収する際は、円売りドル買いが発生します。
たかが一企業の買収でと思うかもしれませんが、規模が大きければ連鎖反応的に市場は動くのです。
投機の為替
為替取引自体を目的として行う為替取引を「投機」といいます。
個人が行うFX取引や、銀行の為替ディーラーが行う為替取引は売買差益によって利益を上げることを目的として行います。
いかに安く買って、高く売るか。いかに高く売って、安く買い戻すかを考え、為替取引をするのです。
投機の為替でレートが動く7つの要因
実需の為替と投機の為替があるのは、すでに説明したとおりです。
ここでは、投機の為替でレートを動かす7つの要因について考えてみましょう。
取引のフロー
為替取引の流れ(フロー)を見て、市場でドル買いが多ければドルを買い、ドル売りが多ければドルを売るという手法があります。
例えば、中央銀行の市場介入や大口のヘッジファンドの取引が市場に出た場合、その取引に追従する注文が大量に出て、これが大きな為替変動の要因となることがあります。
多くの金融機関や企業と為替取引を行う大手銀行は、顧客の取引を通してフローを見ることができますから、この手法が使われることがあります。
経済指標
各国が発表する経済指標の数字も変動要因になります。
実際には、数字そのものが注目されるというよりは、発表される数字が示す意味と市場の予想値とのギャップを、市場関係者がどう感じるかが重要になります。
金利
お金は金利の低い通貨から高い通貨へ流れる性質があります。
例えば、円の金利が1%でドルの金利が3%だとすると、円で預金するよりもドルで運用したほうが有利なため、円売りドル買いが誘導されます。
金利は、お金にとっての磁石です。為替の場合は、2国間の通貨の金利差が磁石の大きさになりますから、金利差が大きくなればなるほど金利が高い通貨が買われることになります。
通貨の安全性
お金はより安全性が高い通貨へ流れる性質を持っています。
ある国で戦争や紛争が起きた場合、その国の通貨が売られ、お金はより安全な国の通貨へ逃避します。
どんなに金利を高くしても、どんなに将来的に成長が見込める国の通貨だとしても、リスクのある国の通貨にはお金は集まりません。
よく、政情不安が高まると、リスク回避の動きが出てスイスフランが買われることがあります。
これはリスクを嫌い、安全な永世中立国であるスイスに資産を移そうという心理が働いているのです。
経済政策
例えば、日本が規制緩和を進めて投資環境の整備に乗り出すとすれば、日本への投資が増えるだろうと予想し、円買いに繋がります。
また、米国が財政赤字を縮小し、貯蓄を増やそうとしているなら、経常収支の赤字は縮小してドル買いにつながると考えられます。
政権交代、政策責任者の交代、要人発言によっても為替レートは動きます。
国際政治
国際政治も為替レートの変動要因となり得ます。
お金はリスクを嫌い、より安全な場所へ移動します。そのため、政権与党が選挙で負けるとその国の通貨が売られる傾向にありますが、これは不確定要素が多いと理由からです。
ただ、与党があまりにも失政が続いていたり、野党の政策のほうが期待でき、それを国民が選挙によって選択している場合は、そうはならない場合もあります。
要は、政権が安定的な政権運営ができるのかがというのがポイントになります。
チャートポイント
ファンダメンタルズ分析が経済の基礎的要素の分析によって為替レートを予想するのに対し、テクニカル分析は、過去の為替レートの傾向から未来のレートを予測する分析方法です。
テクニカル分析では、値動きのパターンや、意識される価格帯を分析しますが、この方法で出された売買ポイントを”チャートポイント”といいます。
テクニカル分析によって、多くの人が売買判断しているため、このチャートポイントも為替の変動要因となります。
代表的な経済指標をご紹介!
経済指標は、大きな為替の変動要因です。
なぜ経済指標が変動要因になるのかというと、それが各国の健康状態を示すバロメーターだからです。
実際には、数字そのものが注目されるというよりは、「発表される数字が示す意味と市場の予想値とのギャップを市場関係者がどう感じるか」という所が重要になってきます。
そのため、数字自体は良かったとしても事前の予測よりも悪ければ、価格は下げたりします。
これが指標の判断の難しい所でもありますね。
GDP
GDPとは、国内総生産のことです。
国内の経済状況や経済成長を推測することができますから発表には大きな注目を集めます。
仮にアメリカのGDPの数字が上昇したとすると、アメリカの経済が好調であることを示しています。
経済成長率が上昇するということは、経済活動が活発になって、その先には金融引き締め、利上げがあると予想します。結果、ドルが買われるためドル高に動くのです。
多くの金融機関がこの発表前までに予測数値を公表していて、いざ発表してからその予測数値よりもいいか悪いかで為替レートが変動します。
もし、上昇が期待されていれば、ドルが買われるのですが、発表されてから市場予測値と変わらなければ、為替レートが変動しないということが起きます。
これは、市場がGDPの上昇を発表前に”織り込んでいた”ということです。つまり、GDPがいい数字であると見込んで、事前にドルが買われていたのです。
逆に「織り込んでいた」にも関わらず市場の期待を裏切ったとき、大きくドルが売られることになります。
事実そのものよりも、事実と市場参加者の期待のギャップの大きさ」の方が相場では重要なんです!
失業率
失業者が多くなると、その国の経済が悪化していることを意味します。
つまり、企業収益や景気が悪化している、またはその見通しが強くなっていることを示し、景気を支えるため金融緩和、利下げが必要になると予想するのです。
利下げはその通貨の売り要因になります。
逆に失業率の低下は、企業収益や景気が上向いている、またはその見通しが強くなっていることを示し、その後には金融引き締め、利上げがあると予想できるため、その国の通貨の買い要因となります。
通常、国の雇用状況を見る際は、失業率を見るのですが、米国の場合、”非農業部門雇用者数”の方が注目されます。これは、米国国内の雇用状況をより正確に反映していると考えられているからです。
10万人を超えると景気の先行きが楽観視されて、ドルが買われる傾向にあります。
経常収支
経常収支とは、貿易収支などをまとめたもので、毎月発表されます。
日本の場合だと経常収支の黒字が増えると、ドルの受け取りが増え、それを円に替えるためドル売り円買いが増えることになります。
経常収支の黒字額が増加したのを見て、それを想定し、ドル円レートが下がるという流れです。
逆に、経常収支が減れば、ドルの受け取りが減り、ドル売り円買いが減ると考え、ドル円レートが上がります。
消費者物価指数(CPI)
消費者が購入するもモノの値段の変動を表す数値です。
インフレを見る時に使われる指標で、金融政策を語る際によく聞かれます。
例えば、CPIが上昇したとしましょう。これは、インフレになる可能性を示し、金融政策は引き締めの方向に動くため、金利が上昇すると考えます。
金利上昇は、その通貨の買いとなります。
逆に、CPIが下落したとすればどうでしょう。金融政策は緩和の方向に動くため、金利が下落すると考え、その結果、その通貨の売りに繋がります。
小売売上高
GDPの大部分を占める個人消費を把握する際に注目される経済指標です。個人消費の動向からその国の景気の先行きを予測するのです。
百貨店やスーパーなどの小売業の売り上げをサンプル調査して推計します。
耐久財と非耐久財に分類されており、月ごとの変動が大きい自動車部門を除いたコア部分に特に注目が集まります。
鉱工業生産
鉱業または製造業に属する鉱工業企業の生産動向を指数化したもので、企業の生産活動の状況を示す経済指標です。
一般的に鉱工業のGDPに占める割合が高く、経済全体に及ぼす影響が大きいため、ファンダファメンタルズ分析をする上で重要な指標となっています。
以上6つの代表的な経済指標を説明してきました。
これらは、一般的に重要であるとされていますが、国、時代、金融政策の方向性によって、注目される経済指標は変わってきます。
結局は、指標の数値そのものに大きな意味があるわけでなく、市場参加者がその数値からその国の未来をどう想像するかです。
ファンダメンタルを考える際には、市場が今何に注目しているのかを考えることが非常に大事になります。
株式投資のファンダメンタルとの違い
株式投資だと、ファンダメンタル面(企業の業績や財務など)が株価に与える影響が大きく、業績や財務がいい企業ほど株価が上がる傾向があります。
いわば、絶対評価の世界です。
ですから、株式投資の場合、ファンダメンタル面をしっかりと分析する必要があります。
一方、FXでは基本的には国と国との間の相対的な関係で、為替レートが決まります。
世界はグローバルで、商品、株式、指数、通貨などさまざまな市場へお金が自由に移動していて、単純な2国間だけの関係ではありません。
そのため、FXでは純粋なファンダメンタル分析のみで値動きを予測するのはほぼ不可能です。
そのような意味では、株式投資でのファンダメンタル分析とは同じファンダメンタル分析と言いつつもその背景はまったく違います。
情報収集
市場が今何に注目しているか”を把握するためには、相場についてのニュースを見ておく必要があります。
毎日のニュースを読んでいくと、なんとなくではありますが、市場のセンチメントというのがわかってくるはずです。
また、読んでよくわからない用語があったらその都度調べてみることで、知識も増えていき、相場観も洗練されていくでしょう。
まとめ
ファンダメンタル分析は、決して具体的なトレードのタイミングを教えてくれるものではありません。
値動きの”根本的な原因”を教えてくれるものです。
ただ、「原因」が、エントリーするのか、しないのか、ポジションを保有し続けるのか、決済してしまうのか、これら売買判断を下す一つの判断材料になるのです。
テクニカル分析だけを学ぶのではなく、ファンダメンタル分析を併せて学ぶことで、より深く相場を理解できるようになるはずです。
日々多くの世界経済の情報にアンテナを張って、少しずつでも知識を増やしていきましょう。
きっと頭の中に定着すると思います。