外国為替取引の中心地「ロンドン」。そのなかで「テムズの取引所」と呼ばれる世界的トップバンクのディーリングルームに在籍した著者が「FX市場の舞台裏」を分かりやすく紹介する。FXで伝説を作ったトレーダー、心理戦を仕掛ける勝負師などのエピソードから、普段私たちが何気なく見ている為替レートの奥で葛藤する人々がイメージできる。
銀行のセールス(起業から買わせ注文を受ける仕事)として長年為替業務に携わってきた著者が語る外国為替市場の内側のお話です。
筆者のプロフィールによると、2002年に独立して投資コンサルを始めたそうなので、本書で語られる銀行のディーリングルームの話は2002年以前になります。
そのため、現状とはかなり話が違っていることを大前提として読む必要があります。
銀行のディーリングルームって一体・・・
この本は全体としてまとまりはありません。
筆者が過去に経験した為替業務に関する興味深いエピソードを淡々と語るだけなので、トレード手法が学べたり、トレードのヒントが得られる、というものでもありません。
しかも話の内容は、おそらく過去のモノとなっているであろう銀行の為替業務の話。
筆者は実際に取引をするディーラーではなく、セールスだったため、「こういったディーラーがいたよ」といった話が多いです。
なので、「読み物」として捉える方が良いと思います。
ただ、AIではなく、ディーラーが存在したかつての銀行のディーリング業務がどんなモノだったのかについて興味がある人にとってはとても参考になると思います。
ディーラー達の普段の生活や動き、何に注目しているのか、過去にどんな事件があったのか・・・など我々の目には見えないインターバンク内の戦いを知りたい方にはぜひオススメします。
銀行の「ディーラー」というと静かにパソコンを眺めて・・・とイメージする人もいるかもしませんが、昔は大声で叫んだり、蹴ったり・・・と体育会系的なノリだったようです。
気になったエピソード
日本人に詳しい著者に対して、イギリス人のディーラがこのような質問をしたことがあったそうです。
「日本人はどうしていつもお人好しで相場の高値で買って安値で売るんだ?」
今も昔も日本人はトレードが下手な人が多いのは変わらないようですwww。
ちなみに、著者はこの質問に対して「赤信号、皆で渡れば怖くないという考えがある」といった回答をしたそうです。確かに、日本人は他者に乗り遅れることを極端に嫌う民族なので、高値で買って、安値で売るようなトレードをしがちかもしれませんね。
結構ページ数は多いものの、淡々とした話が続くので、途中で疲れてしまいがちな本書ですが、価格も安いですので、過去の銀行のディーリングルームはどんな感じだったのかを知りたい人には勉強になるでしょう。