FX市場では、これまでにフラッシュクラッシュと呼ばれる値動きが数年に1度のペースで発生しています。
フラッシュクラッシュとは、為替市場や株式市場で時々発生する通常では考えられないほどのボラティリティを伴うな価格変動です。
通常のトレンド相場や指標発表時とは異なり、何の予告も無しに突然数分の間に100pips単位での価格変動が起きるため、巻き込まれると大きな損失を抱えることになります。
フラッシュクラッシュは予測不能なので完全に回避することはできませんが、損失を最小限に抑える対策はできます。
そこで本記事では、フラッシュクラッシュの過去の事例を紹介し、フラッシュクラッシュが発生する要因等について徹底解説していきます。
数年に1度の混乱相場に巻き込まれるリスクを限りなく下げるためにも、本記事を参考にしてください。
フラッシュクラッシュについて
フラッシュクラッシュとは、為替市場や株式市場で極稀に生じる瞬間的な大きな価格変動のことを言います。
相場は常にトレーダーの売買によって価格が成り立ちます。
その際、様々な要因で価格が変動しますが、通常の急騰・急落のレベルをはるかに超えるレベルのボラティリティで、市場全体が大きく揺れるほどの大きな価格変動がフラッシュクラッシュです。
一般的な価格変動とは異なり、数秒・数分の間に大きく変動して価格が飛んだりするため、例え損切りの逆指値注文を入れていたとしても約定されないリスクがあります。
過去のフラッシュクラッシュの例
まずは最初に過去に発生したフラッシュクラッシュの事例をいくつか紹介します。
- 2010年5月
- 2011年3月
- 2016年6月
- 2019年1月
- 2020年3月
実際にチャートを見ながら、過去のフラッシュクラッシュがどれほど凄かったのかを振り返ってみましょう。
表示しているチャートは全て1分足チャートになります。
2010年5月のフラッシュクラッシュ
2010年5月にアメリカ株式市場で発生したのフラッシュクラッシュにより、FX市場も大きく動きました。
わずか15分でダウ・ジョーンズは9%下落、S&P500も当時の時点で史上最大の下げ幅となった「事件」です。
下は当時のドル円1分足チャートです。
動いたのはドル円だけではありません。
一気に円高に進み、他のクロス円でもフラッシュクラッシュが発生しています。
もう一例としてポンド円もご覧ください。
普段ボラティリティの高いポンド円の方がもっと動いていますね。
このフラッシュクラッシュが発生した時には、ヘッジファンドが仕掛けたなどと言われていましたが、イギリスの投資家「ナビンダー・シン・サラオ」という人が見せ玉と呼ばれる相場操縦の一種を行ったのがきっかけでした。
この時、運の悪いことに発注の設定を誤った他の運用会社の大量の売り注文が発動して、それをきっかけに他のアルゴリズムも発動して連鎖的に大きく動いたようです。
当時は「何事だ?」と大ニュースになりましたが、しばらく時間が経ってナビンダー氏が実行犯として逮捕されました。
2011年3月16日のフラッシュクラッシュ
日本の東日本大震災が発生直後に起きたフラッシュクラッシュです。
この時はまだ日本全体が混乱していて、救助問題、原発問題で大きく揺れていた時ですね。
下はドル円のチャートです。
超円高だった時に、それに追い打ちをかけるような爆下げです。
この時は日本の保険会社が、保険を顧客に支払うために海外で保有する資産を円に換えた(円を買った)ことでフラッシュクラッシュが生じたと言われていましたが、その真実は定かではありません。
2016年6月のブレグジットショック
次は2016年6月に発生したブレグジットショックです。
ポンド円のチャートをご覧ください。
当時イギリスではEUを離脱するかどうかで揺れていました。
そこで国民投票を行うことになりましたが、事前アンケートでは「離脱しない」が勝っていたため、EU離脱(ブレグジット)は無いと思われていました。
しかしフタを開けてみると何と離脱派が勝利。
結果としてポンドが大きく売り込まれることになりました。
本ページではフラッシュクラッシュの一つとしてはいますが、事前に大きなイベントが発生する可能性があることが分かっていた点で特殊な例です。
2019年1月のフラッシュクラッシュ
次は2019年1月3日に発生したフラッシュクラッシュです。
ドル円1分足のチャートをご覧ください。
比較的値動きが落ち着いているといわれている米ドル円ですが、年始早々からフラッシュクラッシュが発生したこともあり、かなり話題になりました。
発生前のレートは1ドル108円台を推移していましたが、わずか数分の間に一気に103円台まで下落・・・。
急落の原因は、米アップル社の決算で下方修正が発表されたことと言われています。
当時の日本はお正月休みということもあり、米ドル円市場で活発な取引は行われていませんでした。
流動性が低下している中で大量の注文が出されたことで、フラッシュクラッシュが発生し、多くの投資家がロスカットに遭いました。
2020年3月のフラッシュクラッシュ(コロナショック)
最後は2020年3月にドル円で発生したフラッシュクラッシュです。
所謂コロナショックですね。
ドル円1分足チャートをご覧ください。
当時は新型コロナウイルスによる経済活動の一時停止や、生産活動低下などが大きなニュースとなっており、この懸念からドル売りが優勢になりました。
フラッシュクラッシュではありませんが、新型コロナウイルスの影響で米ドル円は数日間激しい値動きをしていました。
2020年の2月21日は112円だったレートが、3月9日に101円まで下落して、その後すぐに転換して、2週間後には111円台まで回復しています。
コロナのような世界経済にダメージを与えるようなニュースがあると、為替相場にも大きな影響を与えます。そのため、チャート分析だけでなく、毎日のニュースをチェックすることも大切です。
フラッシュクラッシュが発生する原因について
フラッシュクラッシュがいつ発生するかは、誰にも予想するのは不可能です。
しかし、発生する原因については、過去の事例からいくつか挙げることができます。
- 取引が少ない時間帯での大量取引
- ヘッジファンドなど、市場を動かすレベルの資金を持つ組織による人為的なミス
- AIを活用した自動売買システムの連鎖的な大量取引
1つずつ詳しく見ていきましょう。
取引が少ない時間帯での大量取引
1つ目の原因は、取引が少ない時間帯での大量取引です。
取引の少ない時間帯とは、市場参加者が少ない時間帯を指します。
1日の中で日本時間早朝の5時〜7時は、市場参加者が少ない時間帯です。
この時間帯のチャートを見ると、他の時間帯と比べて、値動きが明らかに小さいことが分かります。
市場参加者が少ない時間帯は、売買が頻繁に行われないので、大きな値動きをすることはほとんどありません。
しかし、ごく稀に機関投資家など大口のトレーダーが大量の注文を出すと、短時間で極端な値動きをすることがあるのです。
この時間は「魔女が出る時間」とも言われており、大きな価格変動が発生する場合があるため、注意が必要です。
また、8月や12月のバケーションシーズンは市場参加者が大幅に減るため、特に流動性が下がりますのでご注意ください。
ヘッジファンドなど、市場を動かすレベルの資金を持つ組織による人為的なミス
フラッシュクラッシュは、ヘッジファンドの人為的なミスによって発生するケースもあります。
ヘッジファンドは、個人投資家に比べて莫大な資金を相場に投入しています。
その時に注文数や取引金額を誤るとどうなるしょうか?
それがたまたま流動性の低い市場や時間帯だったら?
こんなことが重なると、大量の資金が市場に流れてフラッシュクラッシュが発生してしまうのです。
AIやアルゴリズムを活用した自動売買システムの連鎖的な大量取引
AIやアルゴリズムを利用したを活用した自動売買システムの連鎖的な挙動によって、フラッシュクラッシュが発生するケースもあります。
前述の2010年5月のフラッシュクラッシュの原因もこれになります。
最近では個人投資家もEAを利用して自動売買が可能になりましたが、元々はヘッジファンドが得意とする分野です。
多くの自動売買システムが取引を行うタイミングが一致した時、注文が殺到して短期的に相場が変動することがあります。
また、自動売買だけでなく、相場の急変動に反応した投資家が一気に注文を出すことで、更なる価格変動につながることもあるでしょう。
いずれにしても同じタイミングで注文が殺到すると短時間で大きな価格変動を起こすことがあるので、注意が必要です。
フラッシュクラッシュへの対策方法
最後にフラッシュクラッシュへの対策方法をご紹介します。
- 流動性の少ない時間帯の取引・通貨ペアを避ける
- レバレッジを上げすぎない
- 損切り注文は必ず入れておく
- 経済指標・要人発言の前はポジションを決済する
フラッシュクラッシュを完全に回避する方法はありません。
ただ、これから紹介する対策方法を実践すれば、フラッシュクラッシュに巻き込まれる可能性を低くすると同時に、もし巻き込まれても損失を最小限に抑えられます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
流動性の少ない時間帯の取引を避ける
まずは、流動性の少ない時間帯の取引は避けましょう。
前述したとおり、日本時間早朝のように市場参加者が少ない時間帯の取引は、相場の急変が発生しやすいので注意が必要です。
FXは24時間取引できるため、わざわざ危険な相場で戦う必要はありません。
また、流動性の少ない時間帯は、スプレッドが広がりやすいというデメリットもあります。
効率的に取引するためにも、流動性が多い時間帯を狙うことが大切です。
24時間相場が動いている中で、特に流動性が高い時間帯は以下のとおりです。
16時~18時頃
21時~23時頃
これらの時間帯は、ロンドン市場やニューヨーク市場がオープンしており、世界中の投資家が取引を行っています。
そのため、機関投資家による相場を操作する動きもほとんど見られません。
レバレッジをかけすぎない
フラッシュクラッシュを避けるためには、レバレッジをかけすぎないことも大切です。
レバレッジをかけすぎると、万が一フラッシュクラッシュに巻き込まれた時に、一瞬で大きな損失を抱えることになります。
海外FX業者を利用していれば、ゼロカットシステムによって借金を負う心配はありません。
ただ、資金を一瞬で溶かしてしまうリスクもあるため、かなり危険です。
特に、長い時間ポジションを保有する場合は、レバレッジをかけすぎないように注意しましょう。
損切り注文を入れておく
ポジションを持った時は、同時に損切り注文も行いましょう。
これは、短期・長期どちらの取引スタイルでも重要な対策方法です。
レバレッジをかけた取引では、大きな為替変動が起きるとロスカットのリスクが生じます。
ロスカットされると、多くの自己資金を失うことになります。
一方、損切り注文を入れておけば、指定した価格まで動いた時点で自動的に損切りされ、損失が限定できます。
経済指標・要人発言の前はポジションを決済する
経済指標・や人発言の前に、ポジションを決済するのもひとつの手です。
アメリカの雇用統計やCPIであっても、フラッシュクラッシュほど大きな価格変動は起こりづらいですが、各国の経済指標・要人発言の発表前後は、大きな値動きをしやすいです。
内容によっては、テクニカルを無視して相場が反転するリスクもあります。
ただし、経済指標や要人発言は、事前に発表される日時が確認できます。
これらの情報を利用して、ポジションを閉じるルールを決めておきましょう。