
これまでの話では、FXで勝ち続けていくためには、右肩上がりの損益曲線を描くことが最も重要な要素である、ということを何度も主張してきました。
右肩上がりの損益曲線を描くには、値幅と勝率のどちらかを追求する必要があることも解説しました。
今回はこのシリーズの最後としてFXにおける期待値の話です。

これだけです。
期待値とは一体何か?
期待値とは、確率現象の結果が数値で表されている場合、1回の試行の結果期待される数値の大きさのことを言います。
簡単な例を見てみましょう。
当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・???円
※引いたくじは毎回もとに戻す
このくじを1回引くための料金がいくらだったら、くじを引いたほうが得になると思いますか?
まずは感覚的に考えると、当たって2,000円なのですから、くじの料金が2,000円だったら絶対に損になりますよね。ということは少なくとも2,000以下ということは分かるはずです。
では確率的に考えましょう。
はずれの確率・・・(70/100)⇒70%
ですから、このくじを1回引く事で期待できる利益は
={2000円×(30/100)}+0円×(70/100)}=600円
となります。
つまり、くじを引く料金が600円未満だったら、期待値がコストを上回るため、くじを引き続けたほうが得になります。
このような場合を「期待値がプラス」と呼びます。
一方で1回のくじを引くための料金が600円以上だった場合、コストが期待利益を上回ってしまうため、くじをひくべきではないということになります。このような場合は、「期待値マイナス」ということになります。

期待値を考える例
それでは少し例題を考えてみましょう。
当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・300円
※引いたくじは毎回もとに戻す
この場合は期待値はプラスですか?マイナスですか?

当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・800円
※引いたくじは毎回もとに戻す
この場合は期待値はプラスですか?マイナスですか?

期待値の概念をどのように使うか
期待値がプラス、というのは我々にとって絶対的な正義です。
ですから、期待値がプラスである限り、その行為は正しいことになります。
逆に期待値がマイナスであればそれは悪になります。
期待値がマイナスであれば、関わらないことが一番正しいことになります。
先ほどの2つのケースで考えてみましょう。
当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・300円
※引いたくじは毎回もとに戻す
上で考えた通り、このケースの期待値はプラスです。
当たりの確率は1/3ですから、10回くじを引けば平均3回は当たりが出ることになります。
しかしながら、10回くじを引いた時点で、運悪く全てはずれを引いてしまったと仮定しましょう。この時点での収支はマイナス3000円です。
さて、11回目のくじは引くべきでしょうか・・・?
それとも不運を嘆いてこの辺で止めておくべきでしょうか・・・?
これは言うまでもなく11回目も引くべきです。
無論、11回とはいわず、100回でも1000回でも引ける限り引き続けるべきです。
なぜなら期待値がプラスだからです。
大量の試行を繰り返せばプラスの収支が見込める確率が圧倒的に高いと完全に理解しているのであれば、くじを引き続けることが正義なのです。
例3を考えるときも同様です。
当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・800円
※引いたくじは毎回もとに戻す
このケースの期待値はマイナスですから、このくじは1回たりとも引くべきはありません。
もし仮に、このくじを引いていた前任者が5回連続で当たりを引いていようが、逆に前任者が50回連続ではずれを引いていようが一切関係ありません。
期待値がマイナスであれば、やるだけ損ですから、手を出してはいけません。
期待値に影響を与える要素
再度、例2、例3をご覧ください。
当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・300円
※引いたくじは毎回もとに戻す
当たり・・・・30本 賞金2000円
はずれ・・・・70本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・800円
※引いたくじは毎回もとに戻す
2つのケースのうち、例2は期待値プラス、例3は期待値マイナスでした。
この2つのケースを構成する要素の中で、異なっているのは、1回くじを引く料金(コスト)だけですから、コストは期待値に影響を与えることがわかります。
では次のケースはどうでしょうか?
当たり・・・・50本 賞金2000円
はずれ・・・・50本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・800円
※引いたくじは毎回もとに戻す
例4は例3と同じく、くじを引く料金(コスト)は800円で同じです。
当たりの確率が例3よりも高くなっています。
このときの例4の期待利益は、
=1000円
これはコストの800円を上回っていますから、例4は期待値プラスになります。
ここから、当たり確率(勝率)も期待値に影響を与えることがわかりました。
最後の例5です。
当たり・・・・50本 賞金1000円
はずれ・・・・50本 賞金なし
1回くじを引く料金・・・800円
※引いたくじは毎回もとに戻す
例5は例4と、勝率とコストはそのままに、勝ったときの賞金(リワード)の金額を変更したものです。
このときのケース④の期待利益は
=500円
となり、これはコストの800円を下回ってしまっていますから、例5は期待値マイナスです。
よって、買ったときに得られる利益(リワード)も期待値に影響を与えることがわかります。
くじ引きの例を出して長々と説明してきましたが、期待値は、①勝率、②コスト、③リワードの3つの要素に依存するということになります。
つまり、期待値を見積もるためには、勝率、リスク、リワードのバランスを考えなければいけないということです。
FXにおける期待値
さて、さきほどのくじ引きの例をFXに置き換えてみましょう。
期待値に影響を与える3要素の「勝率」に関しては、FXの場合もそのまま単純に勝率です。
つまりは、何回かの試行のうち、何回勝って何回負けたかというような至極単純な要素です。
「コスト」をFXに置き換えると、損切り額(幅)+スプレッドになります。
スプレッドに関しては、くじ引きを引く料金と同様に考えてもらえれば、毎回必ずかかってしまうコストとして理解しやすいかと思います。
一方で、損切り額(幅)に関してですが、くじ引きの例では、はずれを引いたときに賞金が0なだけで、料金以上にコストはかかりませんでしたが、FXは差益を狙ってトレードを行いますから負けたときに損切りが発生します。この損切り幅というものもコストに含まれます。
くじ引きに例えるならば、はずれを引いたときに罰金を支払わされる感覚だと捉えていただければ理解していただけると思います。
最後に「リワード」は、FXに置き換えると利益確定したときの額(幅)です。
くじ引きのように毎回固定にすることもできますが、多少、上下幅にあそびをもたせるのが一般的です。
まとめ
以上がFXにおける期待値を見積もるための3要素になります。
まとめると、期待値を見積もるためには
- 勝率
- 損切り幅
- 利益確定幅
の3つのバランスを考える必要があるということです。
さらに、前回の講座の概念を踏まえると、
「勝率、損切り幅、利益確定幅、のバランスが取れた期待値プラスのトレードの試行を重ねれば収支はプラスになりやすい」ということになります。
今回は概念を理解しやすいように、簡単なくじ引きの例で期待値について考えてみましたが、FXの世界でもこの概念は非常に重要で、勝ち続けるためには理解しておかなければいけない概念でもあります。
